9月22日。待ちに待ったコンサートの日がやって来た。
西本智実指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団によるモーツァルトとベートーヴェン。
コンサートに備えて、3日ほど前からクラッシックは聴かず、音楽を聴くとしたら中島みゆきかバロック音楽にした。クラシックに飢えさせるためだ。
できるだけ、快適にサントリーホールに着くために、メトロ千代田線に乗り入れている小田急ロマンスカーを使うことにした。この車両は、2009年鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞している。見たことはあるが乗るのは初めて。町田駅で待つと、
青い車両がカッコイイ。
車内は意外にすいていた。隣の席が空いているのでデイパックをおろし、Pちゃんが握ってくれた、マツタケご飯の素で作った、マツタケご飯おにぎりを食べていると、アット言う間に代々木上原に到着、そこで乗務員が交替して表参道まで止まらない。町田~表参道を29分で走った。銀座線に乗り換えて、溜池山王でおり、10分弱歩くとサントリーホール。何て楽ちんなんだ。僕はまたロマンスカーが好きになった。
サントリーホールに着くと、まだ開場の1:30より前だったので、近くのオープンカフェや、カラヤン広場を写した。
これがカラヤン広場。
開場を待つ人々。
サントリーホール玄関。

サントリーホールホワイエ。
今回、僕の席は5列目の左端の方。座ってステージを見るとこんな感じ。この写真を撮っていたら、ホールのお姉さんに写真はダメですと注意された。コンサートが始まれば、勿論写真は撮らないけど、まだお客さんがパラパラ入っている程度の時でも写真を撮ってはいけないのかなぁ? みなとみらい や 浜離宮朝日ホール では注意は受けなかったのだけど。
そして、いよいよ開演。
最初の曲は、モーツァルトの「後宮からの逃走 序曲」。メリハリの効いた指揮に対してオーケストラもそれに応え、気持のよい序曲だった。が、まぁ前菜ということなのでカーテンコールはなし。会場は、続くモーツァルトのピアノ協奏曲20番への期待で膨らんでいた。
そして、ピアニストのフレディ・ケンプの登場。大きな体をして、やさしそうな顔をした青年だ。僕は彼の演奏を聴くのは初めてなので、ドキドキした。
オーケストラの前奏が終わり、ピアノが入る。すぐに感じたのは、凄く歌うということ。テヌートと言っていいのだろうか、一音一音に心を込めて歌いあげる。けれど、オケを無視して歌うことはしない。節目節目で指揮者とアイコンタクトをとり、自分もオケに合わせようという姿勢が見えて好感が持てた。
第二楽章。この曲の中で、僕の一番好きな楽章。映画「アマデウス」で精神病院に移されたサリエリが車椅子に乗っているシーンで使われている。天上の音楽のような調べ。全てを浄化するようなメロディー。バイエルを終了した子供なら引けるほど簡単。だから、それをどう弾くかで演奏家は丸裸にされてしまう。ケンプの演奏は良かった。僕はグルダのCDを持っている。グルダは書かれた通りに、見事なまでにシンプルに弾く。が、ケンプは少しだが、ほんの少しだが、ケンプ流に歌う。歌い方のセンスがいい。この曲は中ほどに激しいパッセージがあって、また最初の美しいメロディーに戻るが、そこでケンプは最初と全く同じような弾き方はしない。即興的な(もちろん、熟考したのだろうが)装飾を入れる。実に楽しい。
第三楽章は激しいパッセージを見事な技巧で弾きあげた。演奏が終わると「ブラボー」が飛び、4回か5回目のカーテンコ-ルで鳴りやまぬ拍手に応えて、アンコール曲を弾いた。ショパンのノクターン。ここでも、ケンプ流に歌いあげ、会場を静けさで満たして最後の一音を弾き終えた。
僕はベートーヴェンの7番シンフォニーが目当てだったが、これはケンプにしてやられた。もしかしたら、この演奏会はケンプに食われてしまうのではないか。。。 少し不安になった。
20分間の休憩をはさんで、いよいよベートーヴェンの交響曲第7番。
僕はこの曲に強い思い入れがある。この曲を聴いて感動したのは高校生の時。FMラジオから流れてきた、カルロス・クライバーによる7番。凄く興奮して、レコードを買った。特に好きだったのが第四楽章。エネルギーが爆発するままに任せたこの楽章を聴きながら、登校した。と言っても今のようにウォークマンやi-Podがあるわけじゃない。家のステレオで第四楽章に針を落とし、外にガンガン聴こえるようにボリュームを上げ、朝の支度をして自転車に乗って家を出ていた。僕が出た後、母は切っていたのだろうか、多分そのまま流しっぱなしにしていたと思う。今なら近所から苦情が出るだろうが、そういうことは無かったようだ。
また、第二楽章は僕が大学のワンゲルで最後に行った神津島の合宿の帰りの船の出発時間に流れていた。五色のテープが流れ、「先生、サヨウナラ~」という声が聞こえる。神津島の小学校を離任していく先生を見送っているようだ。春の物憂げな空気の中、第二楽章を聴きながら、「春の岬 旅の終わりのかもめ鳥 浮きつつ遠くなりにけるかも(三好達治)」の句を思い出した。
西本智実の7番は一言でいえば元気のよい演奏だった。
第一楽章は、バンッ と 入らず ズザァン と入った。何のことか分からない? 分かる人だけでいいや。モーツァルトの時より楽団員が増え、迫力がある。テンポは普通で、木管が歌う所は歌い、まぁ普通に終わった。悪くはない。
第二楽章は、チェロ、ビオラ、第2バイオリン、第1バイオリンの順にテーマが演奏されるのが実感できる。携帯プレイヤーや小さなステレオでは味わえない生で近くで聴いているからこそ味わえる醍醐味。それに、ピッチカートが綺麗。これも生演奏だからだと思う。不滅のアレグレットは、あっと言う間に終わってしまった。
第三楽章。僕はこのスケルツォは第四楽章の布石ぐらいにしか思っていない。やや遅めのテンポで始まり、普通に終わった。
第四楽章。この楽章が良ければ、全て良し。期待と不安で一杯になる。第三楽章が終わってから、あまり間をおかずに始まった。テンポが速い。第三楽章が遅めだったので、よりスピーディーに聴こえる。この楽章は理性で聴くのではなく体で聴く。切れの良い棒で、所々で音楽が爆発する。だんだん興奮してきた。自分が若返って行くようだ。そう、この単調なばか騒ぎの仲間に入るには、子供の心を持たなければならない。知らず知らずのうち僕の指は指揮をし体は揺れていた。金管が高らかに鳴り響く。弦が目一杯しなる。そしてフィニッシュへ。ブラボーが出て、大きな拍手。3回か4回のカーテンコールがあり。おしまい。
怒涛の四楽章にブラボー! 終わりよければ全てよし。
今回の席は、5列目の左端の方だったので、オケの音がバランス良く聴こえてくるか心配だったが、あまり気になることはなかった。さすがサントリーホールである。前の方の席だったので、第一バイオリンの演奏者がよく観察できる。副コンサートマスターは、抒情豊かなメロディーを弾くと(モーツァルトの協奏曲のときにしばしば)、弾いた後、右隣に座っているコンマスに向かってうっとりした表情でほほ笑む。コンマスはいつも無視している。面白い。
第一バイオリンの最後尾にはアジア系の女性(そうそう、ロイヤル・フィルはイギリスのオケです)が二人座っていた。一人はインド系の顔。もう一人は中国の南の方の人みたい。アジアの女性ガンバレ。
それから、第一バイオリンを見る限り、後ろに座る人ほど、あまり力を入れて弾かないようだ。コンマスとかは、体全体で弾きまくるが、一番後ろのアジア女性二人はそんなに力を入れて弾かない。後ろで要らないことをしちゃいけないから、そっと弾いているのかなと思った。
今回の席からは指揮者も良く見えた。特に第一バイオリンに指示を出す時。残念だったのが、管楽器が全然見えなかったこと。でも聴く分には問題なかった。
前回、みなとみらいで聴いた西本智実は、今一だったが、今回は良かった。ケンプを聴けた収穫もあった。これで、しばらくはコンサートには行かないようにしよう。カメラ関係の買い物で金欠状態になったので。
サントリーホールで渡されたチラシを見てビックリ。東京ではこんなに音楽が溢れているのか! 有名オーケストラやソリスト達の演奏会がうじゃうじゃある。今回もらったチラシは、この日の演目に関係が深い、交響楽団とピアノが中心だった。それでも沢山ある。僕は、そんなうじゃうじゃある中から今回の演奏会をチョイスしたことになる。いい演奏会に巡り合えて幸せだった。
家に帰ると、「お父さん、声が大きいね」と言われた。音の洪水の中に居たので、感覚が麻痺したみたい。
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